公正証書と支払督促

公正証書とは

 

債権者(貸金業者)がとってくる法的手段に「公正証書」というものがあります。あまり聞き慣れない名前ですが、公正証書とは、公証人(裁判官、検察官、法務局長、弁護士などを長年つとめた人から選任)が法律に基づいて作成した公文書をいいます。

 

公正証書は極めて強力な証拠力をもっており、裁判所の判決と同じ効力があります。債務者が約束通りに履行しない場合、債権者は裁判をしなくても債務者の給料や財産の差押えができます。

 

業者は、公正証書の契約条項の中に「本契約を履行しないときは強制執行ができる」という旨の文言を入れることにより、訴訟を起こさなくても債権を取り立てることができるようにするのです。

 

公正証書の作成においては、債権者である業者と債務者が一緒に公証役場に出向いて、公証人に作成してもらうのが原則となっています。

 

しかし、実際には、業者が債務者から委任状と印鑑証明書をとって、その委任状で立ち会いなく公正証書を作成しています。したがって、債務者のなかには、業者が差し出す書類によく目を通さずに署名や押印をして、後から公正証書作成の委任状も含まれていたというケースもあるようです。

 

法律での規制はどうなっているのか

 

貸金業規制法20条では、「委任状を取得する場合は、貸付の金額や利率、その他内閣府で定める事項を記載しなければならない」、としています。

 

改正貸金業法では、貸金業者が公正証書を作成する委任状を取得すること自体を禁止しています。

 

意思に反した公正証書への対抗法

 

もしも、債務者の意思に反した公正証書に基づいて債権者が強制執行してきた場合には、請求異議の訴えという方法で不服申立を行うことができます。また、強制執行停止の申立を行って強制執行を止めさせることができます。

 

ただし、このときに債務額の何割かの保証金の納付を裁判所から命じられることがあります。覚えておきましょう。

 

支払督促とは

 

支払督促とは、債権者の申立てに基づいて、裁判所が債務者に対して金銭の支払いをしろという督促です。債権者の一方的な意見だけを聞いて発せられるため業者がよく使ってくる手段です。また、訴訟のように時間もかからず、費用も安く済むという特徴があります。

 

支払督促の通知が来てから2週間経過すると、債権者の申立てにより仮執行宣言が付され、債務者の財産や給料などに強制執行ができるようになります。

 

支払督促への対抗法

 

金額に不満があれば、債務者は、支払督促の通知が来てから2週間以内に「督促異議の申立て」を行うことによって通常の民事訴訟へ移行させることができます。

 

異議申立ては、支払督促を出した簡易裁判所に不服があることを申し出ます。不服の理由を述べる必要はありません。

 

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