特有の物的リスクとエンジニアリング・レポート

特有の物的リスクとエンジニアリング・レポート

不動産には物的な瑕疵(欠陥)が潜んでいる可能性があるというのも、大きなリスクの1つとなっています。例えば、それまで積極的に使われていた建築資材のアスベストが突然使用禁止となったり、購入した物件の耐震強度が基準を満たしていなかったなどの重大な瑕疵がある可能性があります。

 

 

他の投資資産、例えば、債権を購入した場合に、債権証書に瑕疵があっても利用者の命に危険はありませんが、不動産の場合は、瑕疵によって入居者や利用者の生命を脅かすおそれが出てきます。

 

 

エンジニアリング・レポートの作成

 

不動産特有の物的リスクには、環境リスク、建築物の耐震性リスク、違法建築物にかかわるリスクなどがあります。不動産投資を行う場合、物理的なリスクを適切に評価するための調査を、専門機関に依頼して行うことが定着してきています。

 

その際には、エンジニアリング・レポートと呼ばれる調査報告書を作成することが有効となります。エンジニアリング・レポートでは、対象物件の環境調査と物的調査に基づいて、環境リスク、建物の劣化状況、違法性、耐震性の評価などの将来予想されるリスクを明らかにすることができます。

 

 

【エンジニアリング・レポートの一般的な構成】

 

  • 建物診断: 管理状況、建物の構造・設備の劣化状況の評価
  • 遵法性調査: 建築基準関係の法律への適合性の評価
  • 修繕・更新費用の算出: 短期および中長期の修繕・更新費用の算出
  • 再調達価格の算定: 調査時点での建物の建築費の算定
  • 環境リスク調査: 土壌汚染や有害物質(アスベスト、PCB)などの環境リスク評価
  • 地震リスク診断: 建物の耐震性能の評価

 

エンジニアリング・レポートは、設計事務所、ゼネコン、建設コンサルタント(エンジニアリング)会社、PM(プロパティマネジメント)会社などに依頼すれば作成してくれます。

 

レポート作成の標準ルールはなく、レポートの内容や質には作成する機関により差が発生してきますが、(社)建築・設備維持保全推進協会と(社)日本ビルヂング協会連合会が刊行している「不動産投資・取引におけるエンジニアリング・レポート作成に係るガイドライン」などが参考になります。

 

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