地震による損失額を示すPML
エンジニアリング・レポートでは、建物の耐震性については、地震PMLという指標を用いて評価していきます。
これは、地震による予想最大損失率(PML = Probable Maximum Loss)のことであり、その建物が予想される最大規模の地震によって被害を受けたとき、被災前の状態に復旧するための補修工事費(損失額)と、総建て替え工事費とを用いて算出します。
総建て替え工事費に対する補修工事費の割合(%)がPMLとなります。
PML(%) = 補修工事費/総建て替え費用 × 100
PMLのメリットには、損失額を算出できることや、対策の費用対効果として比較することが可能となることなどが挙げられます。なお、PMLの算出で想定する地震の大きさは、その地域で50年に10%の確率で発生する地震とされています。
PML値の一般的な見方
一般には、建物の耐震性が高いほどPML値は小さいと判断されています。10%以下では「軽度な損害で耐震性には問題なし」とみなされます。
15%または20%を超えた場合は、「地震リスクを軽減する措置を講じる必要がある」と判断されています。(ただし、耐震性が低い建物でも、地震危険度が低い場合にはPML値も小さくなることに注意しましょう。)
不動産の証券化では、PMLが20%を超えると融資にも影響がでてきます。格付けの低下や銀行などの金融機関から融資を受けることが困難になるため、耐震補強工事や地震保険への加入が検討されます。
最近では、建築士が構造計算書を偽造して、耐震強度が建築基準法の基準を著しく下回る建物が建築されていたという事件を受け、不動産の取得時に第三者の専門家に依頼して構造計算の適合性をチェックするところも増えてきました。
このようなチェックは、ピアレビューやピアチェックなどと呼ばれています。
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