テナントの構成上のリスク

テナントの構成上のリスク

マルチテナント

 

マルチテナントとは、複数のテナントに賃貸している状態のことをいいます。厳密な定義はありませんが、大きなビルに2,3社が入居しているようなケースではマルチテナントとは呼びません。

 

 

マルチテナントのメリット
  • テナント数が多く分散していれば、個々のテナントが退去したときの収入の落ち込みは少なく、リスクが小さくなるという点があります。

 

マルチテナントのデメリット
  • テナント数が多すぎると、1つのフロアを小割りに区画する必要が出てくるため、総賃貸面積が減ってしまうおそれがあります。
  • 複数のテナントが入居することにより、エレベーターやトイレが混雑したり、喫煙者の増加で非喫煙者から苦情が出るケースがあります。
  • 不特定多数の顧客が出入りする状況になると、セキュリティ上の不安が発生します。また、物件内の規則を守らないテナントや、他のテナントへの迷惑行為を行うテナントも入居させてしまうおそれがあります。

 

 

このように、マルチテナントは、テナントの数が多すぎると、管理コストが大きくかかるという点を知っておきましょう。理想はワンフロアに1つのテナントが入居するような状態ですが、なかなか思い通りにリーシングできない部分もあります。

 

 

シングルテナント

 

シングルテナントとは、1つのテナントに1棟丸ごと賃貸している状態をいいます。シングルテナントは、不動産の種類(オフィス系、商業系、ホテル、住居系)で大きくリスクが異なってきます。

 

 

オフィス系

 

オフィス系では、1つのテナントが1棟借りて本社や拠点として使用しているケースがあります。このような場合は、テナント1社の満足度を最大限に高めるように管理すればよいので、他のテナントとの調整が必要なく、管理も省力化することが可能になります。また、信用力の高い企業が多いので、賃料滞納のリスクがほとんどなく、長期的な賃貸借が期待できます。

 

ただし、大企業が退去・移転する可能性もゼロではありません。業績不振、移転や合併などの理由があれば解約することもあります。また、シングルテナントが退去してしまうと、すぐに他のテナントで埋めるのは困難であり、キャッシュフローが大きく落ち込むという面もあります。

 

 

商業系・大規模店舗

 

商業系・大規模店舗では、大手スーパーや百貨店などが1棟ごと借りるのが一般的です。リスクとしてまず考えられるのが、賃借人の信用力です。商業系は景気の変動による影響をまともに受けることになります。長期契約を結んでいる場合でも、契約不履行になる危険性があります。

 

また、商圏の縮小により営業が困難になるケースが考えられます。テナントに撤去された場合は、建物としての汎用性が低いため、他の用途で賃貸することも難しくなります。

 

なお、大規模店舗のテナントでは、変動賃料の設定が特徴となります。固定賃料に店舗の売上に応じた変動賃料が加わるので、うまくいけば賃料収入が増えることもあります。

 

 

ホテル

 

不動産投資としてホテルを取得する場合は、一般的に建物をホテル運営会社(オペレーター)に一括で賃貸することとなります。ホテルを1棟ごと賃貸する場合の賃料は、固定賃料と変動賃料の2つの契約があります。変動賃料の場合は、季節や天候不順による稼働率の低下で、期待した賃料を下回るリスクを考慮しておかなければなりません。

 

また、ホテルは公共的な機能をもっているため、コンプライアンス(法令遵守)も重要となります。内装などに不正な改造があると、営業停止などの行政処分や風評による利用者離れなどのリスクも発生します。

 

 

住居系

 

賃貸マンションなどの住居系の場合は、1社にマスターリースして、そこから入居者に転貸する方法を採ることがあります。賃料の決め方は大きく2通りあり、マスターリース会社に固定賃料を保証してもらう方法と、転借人から受け取った賃料を、そのまま賃貸人に渡す方法があります。

 

マスターリース会社が倒産などで営業できなくなると、不動産経営にも支障が出ます。不動産証券化に際に信用力に不安がある場合は、別のマスターリース会社をあらかじめ手当てしておくリスク回避があります。

 

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